シーク(パンパイプ)の自作 その12018年01月11日 11:40

  *** 熊本・菊陽町からのSusurro(ささやき) ***


 1970年頃、小学校4~5年生(45~6年前)の時にTV-CMで流れた10数秒間のアンデス音楽に心を奪われたのがこの音楽と付き合うきっかけになった。

 アンデス楽器の中で、弦楽器の製作は特別な道具や製作技術が必要だが、管楽器類については構造がシンプルなので素人でも自作可能である。

 「ケーナ(縦笛)」は、日本でも入手できる「竹」を材料として製作可能なので挑戦する気持ちがあればだれでもできる。現在では、100円ショップで工具を調達できる。

 だが、「シーク(パンパイプ)」用に必要な材料は、節が長く肉厚の薄い管が必要なため日本の竹では基準を満たすことが難しい。しかたなく、南米から輸入した完成品を購入して使うことを余儀なくされていた。

 1980年当時、キングレコードからリリースされていた「民族音楽シリーズ」は、1枚 1,300円と他社のLP(2000~2500円)より安価だったので、20歳になってなんとかLPレコードを買えるお金ができた身にはありがたかった。
 
 その中で、「ロス・チャコス」というフランス人グループによるLPのジャケットで、メンバーの一人が シーク(パンパイプ)を持っている姿があった。
  
   *** ロス・チャコスのLPジャケット ***
 
 上記LPジャケットのシーク(パンパイプ)奏者を拡大した画像
 
 
 そのジャケット内写真のシーク(パンパイプ)のサイズは、60~70cmほどで色はゴールドまたはシルバー、曲がりなどのないまっすぐなので自然のものではなく人工的に作られた管を使っているようだった。
  
 そもそもシーク(パンパイプ)の音を出すには、コーラの瓶の口に息を吹き込む原理なので管の底は密閉状態でなければならない。底付きの管があればいいのだが当時なかなな見つからなかったので、シーク(パンパイプ)製作は諦めていたのだった。
  
 しかし、2003年秋にメキシコへ旅行した際に思いがけなく大きなヒントを得ることになった。
  
 「マリアッチ」の本場、グアダラハラと言う町に滞在しているとき、街中を散歩をしながら中心の広場にさしかかると アンデスの音色が聞こえてきたので、音のする方へ足を向けるとひとりの青年が予め録音した伴奏に乗せて、シーク(パンパイプ)を吹いていた。
   
 楽器をみると、「塩ビ管製」だった。曲の合間に青年に近づいて、吹いている楽器について質問した。「塩ビ管」の底をどのようにしているのかを問うと、にっこり微笑んで見せてくれた。
  
 なんと「コルク」を詰めているではないか。まさに「目からウロコ」だった。それまでは、底が塞がれている管を使うしか頭になかったのだが、自分で底を塞げはいいという単純な発想で長年頭の隅にあった疑問は解決したのだった。
  
 当時、メキシコの楽器「ビウエラ」を探しに行った旅だったのだが、思わぬ収穫を得ることができた。
  
 もちろん、アンデス地方管材の節の長さが十分に長く、厚みが薄い材料が入手できれば問題ないのだが、日本の竹ではなかなかその基準に合致するものはない。
 
 メキシコの青年が使っていたように、塩ビ管を使う方法もあるのだが、直径と肉厚が丁度よいサイズがないのが現状である。
  
 ケーナの材料としては、日本の竹でも対応できるのだが。。。
   
   この続きは、次のブログにて
  
 
 **<楽器の呼称について>*********************************
  
 このブログではアイマラ語で「シーク ( Siku )」と呼んでいるが、今や一般には「サンポーニャ ( Zampoña )」と呼ばれるのが圧倒的に多い。しかも、楽器紹介の際には「スペイン語で、サンポーニャと言います」と注釈をして紹介する人もいるようだ。
  
 実際に、日本で発売されている「スペイン語辞典」にも、「サンポーニャ ( Zampoña )」の単語が掲載されているのだが、これは、外来語(イタリア語から)で一般に呼称が拡まり使われているためである。
  
 日本でも日常使われている言葉が外来語だったことは珍しくない。寿司ネタで人気の「イクラ」は鮭の卵として使われているが、「イクラ」という単語自体はロシア語であり、それは魚全般の卵、つまり「魚卵」を指す。これらと同じように、日常的に使われるうちにその国の言葉として意味を変えながら定着することもある。
 
 では、この呼称はどこに由来しているのかと言えば、南イタリアのバグパイプの名前由来なのである。上記のスペルは、スペイン語表記であるが、南イタリアのバグパイプは、「ザンポーニャ ( Zampogna )」と表記される。同じなのである。
 
 ボリビアにもイタリアからの移民が多い。かのチャランゴの大御所である、エルネスト・カブールの苗字である、「カブール (Cavour )」は、イタリアの苗字である。つまり、彼の先祖はイタリアからの移民であることがわかる。
 
 イタリアの首都である「ローマ」の中央駅に相当する「テルミニ駅(Termini)」には、国鉄と地下鉄が乗り入れているのだが、地下鉄Bラインで テルミニ駅の隣の駅名は、「カブール ( Cavour )」。そのままである。
  
 www.ryoko.info/rosen/train/data/rome.html  ローマの地下鉄路線図
 
 既出のブログを参照いただければ、南イタリアのバグパイプ「ザンポーニャ ( Zampogna )」の画像を確認できるほか、動画サイトで検索すれば、実際の演奏風景も観ることができる。
 
 私が、これを知ったのは2002年頃 スペイン北部のアストゥーリアス地方に滞在していた時に、アストゥーリアスのガイタ(スペイン語でバグパイプのこと)を発注した工房からもらったテキストに書かれていた文面からだった。
 
 そこにはヨーロッパのバグパイプが列挙されており、その中に「 ZAMPOGNA 」と記されていた。すぐに、「 ZAMPOÑA 」の文字が頭に浮かび、「もしかすると形が似ているのか?」と期待を膨らませネット検索してみると案の定予想したような姿・形状だった。
 
 したがって厳密には、スペイン語で「サンポーニャ ( Zampoña )」と紹介するのは間違いである。
 
 南イタリアのバグパイプ「ザンポーニャ (ZAMPOGNA)」、 ボリビアに渡ったイタリアからの移民が祖国の楽器の形に少し似ているようだったのでこの楽器の名前で呼んで広まっていったのだろう。
 
 そもそも「パンパイプ」のことをスペイン語辞典で調べると「SIRINGA(シリンガ)」であり、イタリア語辞典も同じスペルの単語になっている。
 
 

 *** 南イタリアのバグパイプ 「ザンポーニャ ( ZAMPOGNA )」 ***
 
 



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